死体の波乗り

もうひとつ実話をお話します。 

「あんた、甘いね。そんなのかわいいもんだよ。」

と彼は吐き捨てるように言った。彼は 当時通っていたジムで知りあったある雑誌のカメラマン。そして彼はサーファーでもあった。私がラフティング事件を話した時の彼の反応はかなりクールだった。

私はちょっとムカついて

「じゃ、もっときつい目にあったの?」

と聞くと

「思い出すのも嫌だ!」

と言いつつ渋々話してくれた。

その頃 すげぇ仕事が立て込んでたんだけど無理矢理オフを作って波乗りに行ったんだ。場所は和歌山。その日はいい波が来てて最高!時間を忘れて夢中になってた。しばらくやって小休止。沖で波に揺られながら腹減ったな〜っと思ってたら 波間に何か見えた気がした。

??

オレンジのライフジャケット・・・・だけじゃない!!

パンパンにふくらんだマシュマロマン!!!!!

ぎぇぇぇぇ〜〜〜!!!絶叫して まっしぐらに浜を目指した。たぶん男。怖くて見れない。まわりには誰もいない。おまけにプ〜ンと悪臭までしてきた。だんだん悪臭がきつくなる。おぇぇぇ〜〜〜ってなりながら必死で手をかきまわした。涙が出たよ。逃げても逃げても あいつは波に乗って追いかけてくる。その時・・・

ザッバァ〜〜ン

でかい波とともにあいつがおぶさってきた!!!!

○×%&+*〜〜〜〜〜!!!

・・・マジで記憶がとんでる。

どうやって戻ったか全然覚えてないけど 浜に着くなり猛ダッシュで逃げた。いちおうレスキュウには通報しといたけどやつらも手におえなかったはずだよ。

・・・だからな、あんたのはまだ新鮮だったんだよ。もう少し時間たってりゃそんなもんですまんわ!!!人間離れしてくるんだってば!あれ以来どんなにうなされたか、目が覚めるとあいつの臭いが残ってる気がするんだ。

彼は涙ウルウルだった。
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