俺には兄がいたはずだった。だが兄は流産で生まれてはこなかった。

小学四年生、衝動の多かった夏休み。俺の足の傷がやけに酷かった。

俺は日本とフィリピンのハーフだ。父が日本人、母がフィリピン人。だが、見かけは純粋な日本人で、ハーフだと言っても誰も信じなかった。

俺には姉がいて、日々喧嘩が耐えなかった。そんな俺はいつも別の存在を求めていた。

ある日、母は俺に言った。俺には兄がいたことを。だが、兄はこの世に生を授かることも無く流産で死んでしまった。

だが、それにはあまりにも謎の部分が多すぎた。

母が妊娠しだすと、頭痛が耐えなくなった。その上、熱も出るようになり、妊娠している時は体調は優れていなかった。そのうち、足に病気を持った。

俺が幼い時、母の印象は普段外出をしない体たらくな人だった。今ではすっかり足も元に戻ったが、それこそ昔母は十分も歩けないほどで、薬漬けだったのを覚えている。だが、後に俺と姉を妊娠している時は熱などはでなかったそうだ。

そして、母はある日から妙な夢を見始めた。右半身が無い赤子が這って来る夢だ。いつも目の前まで来るとそこで夢は終わる。そして、その日が来た。

母は家の階段から落ちてしまった。無理をした結果だった。すぐに病院に駆けつけたが時遅く、兄は生まれることは無かった。

父がその日医者に呼ばれた。写真のようなものを見せられ、それが赤子だと分かった。だが、その赤子は右半身が無い。

医者は、事実を教えていなかった。形ができ始めてから奇形児だと医者は知っていた。だが、あまりにも酷に思った医者は伝えてはいなかった。

母にはその事を伝えてはいないようで、後に俺は父に聞かされる。だが、その時父は言った。

「何でもかんでも呪いを関連付けるな」

父は、これとそれとは別件だと言った。

呪い。俺の足の傷はやはり呪いなのだろうか。だが、父の足には傷は無かった。

だが、そうだとしても俺は妙なものを感じる。兄と俺。何かがあるんじゃないのかと。

俺の左目は1.5だが、右目の視力は0.1未満だ。そして、何よりも決定的なのが俺の右手に親指は無い。
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