妹は霊感体質
私には妹が一人いる。
妹は小さい頃
“お兄ちゃん。今、あの人〜〜〜って思ってたね〜〜。”
という話をよくしていた。
最初のうちはそんなに気にならなかったが、ある日、私は妹がなぜこのような話し方を頻繁にするのか理解した。
私の叔母は一度交通事故で入院したことがあった。当時の医師の話では99%助からず、仮に助かったとしても一生介護が必要となるとの事だったのが、叔母の悪運は強く今でもぴんぴんしている。
叔母が事故に遭った次の日私と妹は両親に連れられ叔母が入院している病院に行った。其の日は私達のほかにも親戚が何人か見舞いにきていた。
其の中には私の祖父の兄夫妻もいた、彼らは私達2人を見つけると私達に軽く挨拶してくれた。そして
“叔母さん早く良くなるといいね。”
と一言声をかけてくれた後、すぐに帰っていった。
夫妻の姿が見えなくなると妹が私にこういった。
“今のおじちゃん、叔母さんが死ねばいいと思ってたね。”
私は妹を
“他人がやさしい声をかけてくれたのに其の人たちに向かって失礼な事を言うな。”
と叱った。
妹は泣き出して、妹の泣き声を聞いた母が私を叱りにやってきた。私は状況を母に説明すると、母は困ったような顔をして妹を慰めた。
其の日の夜、母は私に病院であったことを話してくれた。其の日祖父の兄夫妻は私の母に、私の叔母(母にとっては実の姉)が植物人間になったら大変だ、そうなるくらいなら・・と言う話を本当にしていたらしい。
そして妹がこういう他人の心理に対して異常に敏感なのは母はかなり前から知っていたと言う事も打ち明けられた。私は他人にこの事を話さなかった。
それから妹にはたくさんの質問をした。当時一番怖かったのは自分の心も妹に読まれるのではないか。と言うことだった。妹が言うにはいつも一緒にいる人の心はよく見えないらしい。この話を妹とするまで妹は私も妹と同じように人のことがわかっている物と思ってたらしい。
其の後何度も妹に自分が今何を考えているか当てさせて、ぜんぜんあたらないのを確認して安心した覚えがある。
私は夏休みこの妹と一緒に夜カブトムシを取りに山に行ったことがある。田舎の山でかなり暗かったが、父も同伴だったので、私は怖くなかった。父がカブトムシのいそうな木を蹴ってカブトムシを落として私達が拾った。
其の日は入って30分ほど(よく覚えていない)でクワガタもカブトムシも取れ調子が良かったのでかなり深くまで入っていった。
ちょっと入って歩いて行った所で妹が後ろに立ち止まって私と父を呼ぶ。私と父が振り返ると妹は泣き出してしまった。
其のときはまったくわけがわからず、父のほうを見ると父は妹に駆け寄っていった、私も父の後を追いかけ妹のほうに走っていくと妹は拍車をかけて泣き出す。
其のとき妹が恐怖している対象が自分のすぐ後ろにいるのではないかと心配になり私も泣き出してしまった。
妹は私達から逃げるように走りながら山を下りていく、私は泣きながら走り妹に追いつく寸前のところで派手にこけてしまった。持っていた虫かごもひっくり返してしまったが、虫に構っている余裕など無く虫かごも放って走った。
父は後ろで虫かごを拾ってくれたのだが虫かごの蓋も虫も拾ってこなかった所を見ると父も相当慌てていたのだと思う。
車に乗り込んだところでひとまず落ち着きを取り戻す。私も妹もしばらく泣いていたが、車が町の灯りが見える位のところに来ると泣き止んだ。
父は妹に何故急に泣き出したか聞いた。妹がいうには妹が立ち止まったところの少し前に白い人が一人立っていたらしい。更に私達が前に進むと更に何人か増えたらしい。私達が妹のほうに振り返ると私達の前にいた白い人が私の腕を掴んで
“逃げるな!こっちに来い!”
と言っていたらしい。妹は私を引っ張る白い人が怖くて私から逃げていて、私がこけたのは別の白い人にぶつかったからとの事だった。私がこけた後私を捕まえていた其の白い人はどこかにいったらしい。
妹に白い人は服が白いのか肌が白いのか聞いたが妹はその人たちは色が無いから白いと言っているだけで実際に何色かは妹もわからないとの事だった。
色が無い=白ではなく、色が無い=透明だと言うことを伝え透明なのに何で見えるのか問い詰めて喧嘩したこともあった。声に関しては男の声だったとはっきりと答えていた。
当時しばらくの間“白い人”と言う言葉が私の中でトラウマとなっていた。父はいまだに私に笑いながら
“白い人が来るぞ〜!!”
などと冗談で言う。
今でこそ私も笑えるが、当時はしゃれにならなかった。
⇔戻る