見知らぬ看護師にご用心

病院に関する小話でもしようか。

病院って言えばそれはもう人が死んだり生き返ったりするわけで、ある意味幽霊の100や200当たり前にいそうなもんだけど実際にはほとんどいない。やっぱり霊になるにはただ死ぬんじゃなくてそれなりの恨みが必要なんじゃないかな?とオカ板住人としては思ったりします。

これは自分が実際に体験にした話ではなくて、入院中に又聞きした話です。

もう20年以上前の話になるんだけど、入院患者と看護士さん(って書かないと差別になるんだっけ?)の間で色恋沙汰があったらしい。患者のほうには奥さんがいたんだが、何かと狭苦しい入院生活中のお遊びというかそんな感じだったらしい。しかし当の看護士は本気だった上、見事に処女。責任をとってくれとかなり激しく迫っていた。

困り果てた男性はまず看護士を騙し、退院した夜に奥さんと三人で会って、そこで君と一緒になると妻に告白するということでまず話をつけ、その裏で奥さんにも相談し、退院する前日の夜に病院から脱走してしまったらしい。でそのまま雲隠れ。大分入念な準備をしていたようで、翌日の昼間には大分上乗せした入院費が送りつけられ病院としてもそうした情事があったということを公にはしたくなかったため、看護士が1人泣き寝入り状態になり、ついに自宅で首を吊って自殺してしまった。

それ以来、男性が逃げ出した日、5月17日の夜に脱走を防ごうとする看護士が夜の病院を巡回している。という噂がたち、実際に毎年目撃情報が1〜3件出ているそうです。

とはいえ、1年にたった1日なうえ、特に何かをするわけでも、恐ろしい形相をしているわけでもなく実に自然な幽霊なので少し前までは冗談半分で細々と語り継がれてきた都市伝説に近いものだったそうです。しかし、ある事件を境にそれが恐怖の幽霊として語られるようになりました。

ここから先は、自分がいた大部屋一番の古株だった萩庭さんが、同室の佐藤さんから聞いた体験談。

5月17日の夜、1時半過ぎ。佐藤さんは夜のどが渇いたので共同の冷蔵庫にヤクルトを取りにいった。その途中で奇妙な看護婦さんをすれ違った

「どうもこんばんわ。こんな遅くまで大変ですね。」

(アレ?こんな看護婦さんいたっけ?)

「あ、いえいえ。大変失礼ですが、何号室のどなたでしたか?」

佐藤さんは、たまたま移動か何かでここ1日2日で来た新しい看護婦さんだと思い、特に疑う様子もなく答えた。

「ああ、316号の佐藤です。お世話になります。」
「316号室・・・どうです?お体の具合のほうは?」
「ええ、まだ抜糸はできないですし、腰を屈めるだけで痛くてトイレが大変ですが、それ以外は大分いいですよ」
「そうですか。どうかお大事に。早めに寝てくださいね。」

こうしてその看護士はその場を去っていった。

(結構かわいい顔してるなぁ。)

と鼻の下を伸ばしながらベッドに戻った佐藤さんは、翌朝さっそく萩庭さんを始めとした同室のメンバーに、新しく来た看護士が美人だと言いふらしていた。

しかし、そんな話とは裏腹に病院内が妙にざわついている。そこで事情を聞きに行ったTさんが、青ざめた顔で戻ってきてゆっくりとこう話した

「327の大田さんが、昨日の晩に自殺したらしい・・・」

何となく嫌な空気が漂い、そこで彼女の話題は途切れてしまった。

後に入ってきた情報だと、大田さんは順調に回復していて退院のメドも経っていたし特に現状を苦にするような状況にもいたわけでもなく、何故自殺を?と皆首を傾げていたようだ。

17日の夜に、普段は閉められている屋上からの飛び降り自殺。しかし見回りの際に閉まっていたことは確認されていたらしく、どうやって鍵を開けたのかは分かっていないそうだ。

佐藤さんは退院する直前、萩庭さんにこう漏らしていた。

「俺さ、調べてみたんだけどあの夜俺が見た看護婦さん。少なくともこの階にはいないみたいなんだ。今考えてみると、あの看護婦さんは例の自殺した幽霊じゃないか?って思うんだ。勿論偶然かもしれない。でもなんとなくそんな気がするんだ。」

その夜太田さんは一体何を思い死を決意したのだろう?もしそれが自殺ではないとするならば、太田さんは誰を見て、何をされたのか?それは誰にもわからない。

萩庭さんは自分にこういって締めくくった

「その霊にあったら次の二つを守ればいい。1つ目はまだまだ退院までには時間がかかることを言うこと。2つ目は部屋を聞かれても決して個室の番号は言わないこと」

今もその噂が続いているのかどうかわからないけど、入院先でそんな噂を聞いたら注意するといいかもしれない。
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