デジカムに映るのは

デジカメを買ったばかりの頃、バイク乗りだった俺はオリジナルの台座を作ってカメラをバイクに載せて、夜な夜な近所を走り回ってた。(別に峠を攻めてたとかじゃなくって普通に走行)

その日も30分くらい走り回って、撮った動画を早速自宅で見て楽しんでたわけ。でも走る30分と見るだけの30分は違うから、さすがに半分くらい見たところで飽きてきた。

「やっぱ実際走らないとダメだなー」

って思いながら惰性で動画を見てたら、ある田舎の交差点に差し掛かった場面で

『ギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアーーーーー!!!!』

って凄い音がした。

「えっ」って思って動画に見入った。だってこんな音、さっき聞いた覚えが無い。画像はブレまくりで何が起こってるのか分からない。何かひどい音だけが聞こえる。

しばらくしてようやく上下の区別がつくようになって、分かった。カメラ(つまりバイク)は転倒して横になってるみたいだった。

その視点の先、ウィンカーの光に照らされてる人影がある。横たわって動かないその人影は俺だった。事故ったんだ。

また「えっ」って思った。俺、さっき無事に帰ってきたばっかなんだけど。だから今動画見てるんだけど。

混乱する俺の目に、動画の続きが映った。横たわる俺に近づいてくる人影がある。黒い足だけしか見えないけど、「ぶつかった車の運転手か?」ってそこだけ妙に冷静に判断してしまった。

運転手(?)は横たわる俺に近づくと、ヘルメットを被った俺の頭を踏みつけた。何度も何度も。何度も何度も。画面の中の俺はただ蹴られるまま、ピクリとも動かなかった。

すさまじい悪意を感じて俺は吐き気がした。この俺は無事だけど、無事じゃない気がした。
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