カメラは見ていた

どっかの大学のサークルの話。

そのサークルの中で、近くの心霊スポットを何箇所か回って心霊映像を撮ってみよう、って話が出たんだと。それに賛同したメンバー(男女混合4、5人)はそれぞれビデオカメラを装備してその日の真夜中に集合、肝試しを始めたらしい。

結局、心霊現象はなんもなかったみたいなんだけど、ひとりが

「もしかして“何か”ついてきてるかもしれへんから今日一晩はビデオ撮りつづけよ」

と提案した。

次の日の学校でみんなのテープの鑑賞会をすることになった。

そんでみんな家に帰って寝るまで自分を撮りつづけ、次の日学校に録画の終わったテープを持って集まった。

けど、メンバーの男(A)がひとりが自宅にテープを忘れたといって取りに帰ったんだけど、全然戻ってこない。連絡もつかない。仕方ないから残ったメンバーだけで今あるテープを観た。けど、何も映っていなかった。

帰りにみんなで戻ってこないAのアパートに寄って様子を見にいった。そいつの部屋の前まで行ってチャイムホンを鳴らすんだけど全然返答がない。ドアの鍵がかかっていなかったから様子を伺いながら中に入った。

ワンルームの部屋にAはいなかった。ただビデオテープだけが無造作に転がっていた。妙にそのビデオが気になったメンバー達はテープを再生してみる。

昨日の深夜の映像が流れた。映ってるのはみんなが楽しそうにはしゃいでる姿だけで他に変わったものは何も映っていない。肝試しが終わって、Aは言われた通り録画をやめずに家まで戻って部屋を上から見下ろすような形にカメラをセットしてあと寝た。

メンバーは早送りするその映像に釘付けだった。

朝になって、ちょっと寝過ごしたAは慌てて起き上がり急いで支度を済ませて部屋を出た。もちろんカメラはそのまま。その映像を見て

「こいつむっちゃ慌ててんな〜」

みたいな感じでみんな笑う。が、一気にメンバーは凍りついた。

Aが部屋を出て間もなくに誰かが部屋に入ってきた。

“それ”は白いワンピースを着た女。ずっとうつむきかげんで髪が足元まで伸びているから顔は見えない。片手には斧を持っている。

部屋の真ん中まで来ると微動だにせず1時間ぐらいずっとそのまま立っている。全くぴくりとも動かない。

さらに数分が経つとドアがガチャガチャ動いた。Aがカメラを取りに戻ってきた。すると“女”は突然もの凄い速さで押入れに隠れた。

何も気づかないAは部屋に入った。カメラの前にたって外そうとするA。

カメラは最後にAの後ろの押入れのふすまが開くのを映したところで切れた。
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