コツコツ

あの日は、すっげぇ蒸し暑かったのを今でも覚えてる。深夜の12時くらいかな、兄貴とゲームしてたんだ。それでさ、急に部室に忘れ物したの思い出して、取りに行こうと思ったんだよ。今考えると次の日取りに行けばいーじゃんって話だけど。

兄貴に

「ちょっと忘れ物取りに行ってくる」

って家出たんだ。学校と家は近いから5分くらい全力でチャリ漕げばすぐ着く距離なんだ。で、ギア3にして全力でチャリ漕いで学校に着いたんだよ。蒸し暑い夜だったから当然着いた時には汗だく。で、学校の裏の駐輪場がある入り口から敷地の中に入ったんだ。

その瞬間、空気が変わった気がした。めちゃくちゃ蒸し暑かったはずなのに学校の中入った瞬間肌寒いような嫌な寒さになったんだ。で、当然俺はやばいやばいこれ多分やばいって思ってすぐ学校の外出ようかと思ったんだけど、何を思ったのかどうせここまで来たんだし忘れ物だけは取って行こう、って思って部室に行ったんだ。

それで部室の前に到着して、いつも鍵が隠してある場所から鍵取って開けて、部室の中入って忘れ物取って外に出て、鍵閉めて鍵を元の場所に戻して、さっさと帰ろう…ってなって自転車に乗ったんだ。そしたら何か聞こえるんだよ。なんつーか…ハイヒールあるじゃん?あの靴の音がカツン…コツン…ってなんか近づいて来るんだよ。

それでやばい…とっとと帰ろうって思って自転車のペダル踏もうと思ったんだけど、体が動かないんだ。その間にもどんどん靴の音は近づいて来る。そろそろ電灯の下来る頃かな、とか変に冷静に考えて凝視してたんだけど…誰もいないんだ。ただ、靴の音だけが近づいて来る。

本気でちびりそうになったんだけどそれを何とかこらえて動け動け動け動け!ってひたすら思ってたら体が動く。これ幸いと即効で自転車漕ぎだしたんだ。そしたら靴の音がありえないくらい早くなって俺を追いかけて来た。なんかさ、もうすぐ後ろで音聴こえるんだよ。

で、俺思いっきりペダル踏んで自転車のスピード上げた。多分あの時は限界突破してたんじゃないかと思う。裏からそのまんま出ればいいのに何を思ったのか正門から出ようと思ってひたすらチャリ漕いだんだ。その間にもどんどん音は近づいて来る。それどころか学校の窓が内側から叩いてるみたいにガンガンガンガン鳴り出したんだよ。

軽く錯乱状態になって必死に泣きそうになりながらチャリ漕いだ。その間にも靴の音は近づいてくるし窓はもう割れるんじゃないかってくらいガンガン鳴ってた。

ようやく正門に着いて、転がり出るように必死で出たよ。というかコケたんだけどね。で、学校の方ビクビクしながら見てみると、何もいないし音もしない。シーンとしてるんだ、何事も無かったかのように。それ見て更に滅茶苦茶怖くなって、早く帰ろう!って思って後ろ向いたんだ。

そこには、髪の長い女がいた。貞子みたいな感じの。で、俺に近づいてきて耳元でこう言ったんだ。

「もう少しだったのに…」

って。

当然俺は気絶。起きたら朝で学校の保健室のベッドの上だった。どうやら先生に発見されて保健室に連れてこられたらしい。事情聞かれたから洗いざらい全部先生に話したんだ。そしたら先生が

「あー…お前も会ったのか、コツコツさんに」

って言ったんだ。先生の話を聞いたところ、どうやらこの学校は結構そういう事があるらしくて、先生もコツコツさんに会ったらしいんだ。ちなみにコツコツさんってのは誰から先に言い出したかわからんけどそう呼ばれてるらしい。

霊感ある友達も

「この学校ちょっと変だなぁ…特に家庭科室。うじゃうじゃいるよ」

って言ってた。先生とかに聞き込み調査したところによると、自殺した人とかもいるらしい。霊感0の友達もなんか見たって言ってた。

これを期に俺は絶対夜の学校には近付かなくなった。今はもうその学校卒業して専門学校生やってるんだけど。あれからまたコツコツさん出たのかな、久々に学校に顔出しがてら聞いてみようかと思う。と言っても、今夏休みだからロクに人いないだろうけど。

と、これが俺が今までに経験した中で一番怖かった体験。へぼいけど許して下さい。皆さんも、夜の学校には十分お気をつけ下さい。
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