事故の原因

北海道に主張中、札幌から旭川まで国道12号線を車で走っていたときの話。

当時の北海道は、交通事故ワーストナンバー1にダントツでランクインされているほど、交通事情が悪かった。理由は定かではないが、

「どうせ、道がひろくて長いから、みんなスピードを出しすぎるからだろう。」

くらいにしか私は考えていなかった。ところが、いざ走ってみるとそうでもない。むしろ、みんな制限速度を意識して走っているかのようだった。

「うーん かなり大きな道だからな…覆面パトカーでもいるのかな…。」

そう思ったとき、不思議な現象が起こった、周りの車がいつのまにか一台、一台とみられなくなっていき、気がついたときには広い道路で私の車一台になっていた。

「おいおい 何で誰もいないんだ…。」

時刻は昼の3時、誰もいなくなるような時間じゃないし、札幌郊外であることから、そんなに田舎道というわけでもない。

そのまま30分ほど走っていると、急に雨がふりだした。雲ひとつない晴れ空の中なのに、雨は時を追うごとにしだいに強くなっていった。そしてしばらくすると雨の音が聞こえなくなった。

「あれ…雨の音が聞こえないぞ…。」

そのとき、たしかに、どしゃ降りの雨がふっていたはず。でもさっきまで聞こえていた雨音が聞こえなくなった。

「音だけが消えた?」

あまりにも不可思議な状況に絶えられなくなった私は、アクセルを強く踏み、早くこのあたりから抜け出そうと考えた。しかし、アクセルをいくら踏んでもスピードがあがらない…むしろ落ちていく一方だ。

あせる私に追い討ちをかけるかのように、奇妙なうめき声が聞こえた。

「あ…あああぁぁぁ… ぁぁあああ… あ…」

かすれるように、遠くのほうで聞こえる声…。それも一人や二人ではない、もっと大勢の苦しむような声だった。

「ああぁああぁああぁぁぁ…」

その声はこれから向かう方角から聞こえてくる。進むにつれどこから聞こえてくるのか、だいたい察しがついてきた。

「あの橋の下…なにかいる…」

その橋にさしかかったときはじめて不気味な声の主たちのすがたがみえた。

「…囚人だ!」

数えきれないほどの足かせをしていた囚人たちの群れが、川の向こう岸からこちら岸に向かってはいつくばって渡ろうとしているのだと思う。川には囚人たちの血と肉が交じり合い下流に向かいながれていた。

「このまま橋を渡りきったらまずいんじゃないのか?」

あわててハンドルを切ろうとしたが、何か ひやっとしたものが私の腕を硬く強くつかんで切ることができない。私は怖くて自分の腕をつかんでいるものの正体を直視しなかったが、おそらく、白い男性の手だったと思う…。

そのまま橋を渡りきった私の前に現れたのは、何事もなかったように、走っている車の長い列だった。いつの間にか雨はやみ、あの声も聞こえなくなっていた。

しばらく夢のような感覚にとらわれていた私だったが、腕には、つかまれた触感がしっかりと残り、みなれないあざが残っていた。いまさらながら思うが、この周辺でおこる交通事故は、あの囚人たちの仕業に思えてならない。

余談になるが北海道の交通事故の大半は、時速40キロ以内で起こっているという。
⇔戻る