トラウマ

幽霊とかは出てこないけど私の体験?を一つ。

最近上京して一人暮らしを始めた私(女ね)。

小さい頃から何故か強烈にバイクに対して強い憧れがあって両親には強く反対されていたのだが、自立したのをきっかけにこないだ両親に内緒でバイクの免許を取った。教習所に通って初めてマニュアルのバイクに乗った時は憧れと興奮で事故に対する恐怖心やそんなものは全くと言っていい程なかった。

ところがいざ免許を取って、バイクも買って、さぁ、公道に出るぞ!という頃になって、何故か突然に、唐突に、すごい悲惨な事故の想像ばかりしてしまうようになって、途端に怖くなった。

確かに都内の道路は交通量も複雑さも、地元(田舎)の単純で閑散とした交通状況とは全然違う。それも当然の事だと思った。(四輪の免許は持ってて、地元も都内も走った事はあった)それで折角手に入れたバイクも、結局わりと近場に行く程度しか走っていなかった。

そんな中、つい先日の事。用事で地元に帰った時、何となく実家の自分の部屋の押入れを整理していて昔の思い出の品とかが出て来たので、暇潰しに小さい頃のアルバムをめくってみた。順に小さい頃(の写真)に戻って行くと、6、7歳くらいの頃の私が、見覚えのない浜辺で弟と砂で遊んでいる写真が出て来た。そこで久々に思い出した事があった。小学校1年で転校した私は、確かそれまで神奈川に住んでいたのだ。だから多分神奈川の何処かの浜辺だろう。(親に聞いたら、何とか海岸じゃないかとか言ってたけど関係ないから割愛)

そこで不思議な事が一つあった。私はこの頃の記憶がかなり曖昧だった。6、7歳頃の記憶。それ以前もうちょっと小さい幼稚園の頃、幼稚園を抜け出して怒られた事とか些細な事でも結構覚えてるのに。

不思議に思って親に聞いてみたら、親は明らかに動揺した感じでこう言った。

母「その頃の事本当に覚えてない?何も?」
私「全然」
母「Aちゃん(私)、お隣のお兄さんが大好きだった事も?」
私「???」

私はこの時、しつこく食い下がって過去を探り出した事を後悔した。

私「大好きなお兄さんがいたの??なんか素敵な予感(wktk」
母「バイクに乗っててね、バイクのお兄ちゃん、バイクのお兄ちゃん、って言って、すごく慕ってたお兄さん」
私「バイク!(それだ!)で、そのお兄さんがどうしたの??(wktk」

幼い頃のロマンスに期待を寄せてワクテカな私。

母「交通事故で死んじゃったの」
私「!?」
母「私達の目の前で」
私「!!??」

要約するとこんな感じだった。

私が7歳の夏、家族でドライブに出掛けた。その帰り、自宅近くの国道でちょうど別に出掛けていて、帰る途中のお隣のお兄さんのバイクがうちの車の後ろについた。多分親しいうちの車だったからあえて後ろについて一緒に帰宅の途についたのだろう。バイクとお兄さんに夢中だった私は後部座席でお兄さんに手を振ったり、一方的にジャンケンしたりして遊んでいたらしい。その時だった。

脇道から出て来たトラックがお兄さんを吹き飛ばしたのは。反対車線を走っていた別の車にまで撥ね飛ばされて死亡した。お兄さんの遺体はこの上ない悲惨なものだったそうだ。

幼い私を親が庇って見せないようにしていたようだが、私はそれを見てしまったらしい。私は泣き叫ぶと思いきや、その場で凍りついたように動かなかったそうだ。

こんな話を聞いて、すごく悲しくなったが、やはり記憶が今ひとつピンとこず、時間が経って大人になった今、ただただ漠然とお兄さんの死を悼む事しか出来なかった。(ちなみにその後そこを引っ越したのだが、この引越しはこの事故とは直接関係なく親の仕事の都合だったらしい)

やりきれないような、それでいて覚えていないから正直どうでもいい事のように考えながらぼーっとさっきのアルバムをめくっていた。残念ながら「バイクのお兄ちゃん」と写っている写真も残っていず、記憶が冴える事はなかった。

ところが、アルバムと共に出て来た落書き帳にそれはあった。鉛筆で下手糞な女の子や猫(らしきもの)が描きなぐられている中、バイクとおぼしき物と、それに乗っているらしき男の人の絵。その下には「ばいく のおにいちやん」「すき」等と書かれている。

「ああ、これが…大好きだったんだなぁ…」

と、なんとなく切ない気持ちになった。めくっていくと、それから数ページとりとめもない絵や文字が描かれていたが、最後のページを見て背筋が凍りついた。

「おにいちやん とばいく が しんだ おにいちやん が なん だかよくわから ないもの に なりまし」

この文から、幼い私が何を見たのか容易に想像出来た。東京の自分の部屋に帰って、自分のバイクを見た途端、寒気に襲われた。

相変わらず事故の記憶は鮮明にはならなかったが、バイクを手に入れた途端に湧き出したあの恐怖の感情は何を意味しているのか、私はバイクを乗り続けて平気なのか、判らない。
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