3人目のおばさん

去年就活で東京行ったときに、渋谷駅の何口か忘れたけど出て携帯で地図を見てたのね。そしたらすぐ近くによくいる派手な占い師風のおばさんと2人のおばさんが3人でなんか話し込んでるのね。立ったままで。普通占いって座ってやるもんだし立ったままでなんか異様だなーと思ったんだけど、

気になったから携帯見てる振りして近づいてチラチラ横目で見ながらその人たちの会話を盗み聞きしてたのね。でも近づくのには限界があったし昼間の渋谷駅前の人ごみの中じゃざわざわ周りの騒音がうるさくてほとんど聞き取れなかったんだけど。

でも、どうやら私に一番近くてこちらに背を向けてるおばさんが向かい合ってる占い師(風)のおばさんになんか相談してるらしいことはわかった。やがて、占い師(風)のおばさんが言った言葉が断片的に聞こえた。はっきりとは覚えてないけど、

「あなた、自分でも気づいてるんでしょう?」

とか、そんな感じだったと思う。なんとなく、占いのアドバイスとしてはヘンな言い方だなーと思ったけど、あまりブラブラしてる時間もなかったしその辺で諦めてその場を離れた。

そのあと、家に帰ってから昼間の渋谷でのできごとを思い出したとき、あの占い師風のおばさんの台詞も含めて、なんだか異様な、ひっかかる感じがしていた。それって、どうやらあの3人目のおばさんのことなんだ。

占い師風のおばさんと相談してるおばさんのほかに、もう一人あの場にいたおばさん。ものすごく背が高くて、顔はいわゆる「不幸顔」とでもいうか…。この世の不幸を全部背負ってるかのようなものすごく暗い顔だった。

だから、最初あの3人を見たとき、

「うわー、いかにもこんな怪しい占いにひっかかりそうな感じの人だな〜」

って思って、何も考えずにその印象だけで相談してるおばさんの連れだと思い込んでた。

でも、よく考えてみたらその不幸顔のおばさんはあの場で一言もしゃべってないわけ。一言もしゃべらずに、ただじーっと、相談してるおばさんの方を見ている。

ん?

相談してるおばさんの連れで、占い師のアドバイスを一緒に聞いてるなら、占い師の方を見るはずだよな…。なんで、おそらく自分の連れの、相談してる側のおばさんの顔を見てたんだろ…?しかも、もうひとつおかしいことに、あの占い師のおばさんも、相談してるおばさんも、どっちも、あの3人目のおばさんのことを全然見てなかった。まるで、目に見えない存在であるかのように…。

で、思ったんだけど…あの3人目のおばさんって、実は人間じゃなかったんじゃないかって。そして、占い師のおばさんも占い師ではなくて霊能者だったのかも。あの

「あなた、自分でも気づいてるんでしょう?」

という謎の台詞は、

「あなた、自分に憑いてるモノに気づいてるんでしょう?」

という意味だったんじゃないか?もしその想像が当たってるなら、あの3人目のおばさんは一体なんだったのか。

異様な背の高さと、見たこともないような暗い顔をしたあのおばさんは、幽霊っていう感じではなかった。幽霊って少なくとも姿は人間でしょ?あのおばさんの異様な背の高さと暗い顔は、人間っぽくはなかった。たぶん、いわゆる「貧乏神」とかそんな類のやつだったんじゃないかとなんとなく思う。

なんか書いてみたら全くの想像というか妄想にすぎないな。しかも怖くなくてごめん。

でも、あのおばさんのものすごく暗い顔は、今でも異常に脳裏に焼きついてるんだ。
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