雨の中の肝試し
〜後編〜

雨が激しい。すごく暗い。何時だったんだろう。

青山のところまで一気に近寄ってきて、俺らはぎょっとした。青山の足元の地面から手が出てる。それで青山の足がその手にしっかり握られているのだ。こっちに向かおうとしているようでなんだか様子が変だったのはこれだったのか

みんななにも言えない。

「これはずしてくれよ!!!」

青山がないて俺に頼んだ。俺は離れてその足元の手をじっと見た。心臓がへんだった。頭も痛い。なんか視界がせまい。

「マネキン・・・?」

マネキンの手。マネキンの手だった。でもなんでグラウンドの真ん中にこんなもんが突き出てんの?

マネキンの手だと分かっていてもはずすのは恐かった。青山も「肝試し」でこういう目にあわなかったらこんなにも取り乱さなかっただろう。しかももう回りは真っ暗。雨の中、一人でグラウンドの真ん中でマネキンの手に足を握られて動けないでいるなんて、恐すぎる。

がっちりと食い込んでいた手は5分かかってようやくはずすことが出来た。青山はボールをゴール地点に置いたら急になんだか恐くなってダッシュで帰ろうとしたらいきなり足をとられたんだそうだ。それで足元をみたら人間の手。相当ショックだったろう。すぐにマネキンのてだとわかったものの10分ほどもがいていても動転していたせいかとれない。きっとよっぽどダッシュしてつっこんだんだろーな。それでパニックになったそうだ。

「へんなおじさんみなかったか?」

小島が青に聞く。

「わかんない・・でももがいているとき、きっと恐かったからだと思うけど、俺のほうになんか来る足音が聞こえたよ。見たくなかったから目をつぶったけど・・きっと気のせいだよ」

青はみんなとあってやっと少し落ち着いたようで恥ずかしそうにしゃべった。

「もう帰ろう」

小島が言った。神山もおまるも俺も、そして青山もうなずいた。

みんなでグラウンド引きかえそうとした。

青がなんか聞いたって言うことに関してはだれもなにも触れなかった。触れる余裕なんて無かった。恐くてしょうがない。雨は俺たちをずぶずぶのびしょしょにしていた。なんでこんなことしちゃったのかなあ。肝試しなんてやめりゃよかった。そう思いながら青山をきづかって、みんな校舎のほうを向いた。その時俺たちは聞いた。

ざしゅ ざしゅ ざしゅ ざしゅ ざしゅ ざしゅ ざしゅ ざしゅ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これは靴がどろどろの砂を歩く音だ。だれかすぐ後ろにいる。動けない。誰も動けない

「ふふ」

俺らは絶叫した。グラウンドは300メートルぐらいで端から端までいける。ちょうど真ん中にいたから金網のドアまでは150メートル。でもそのときはすごく長かった。

だれもいなかったのにグラウンドの真ん中にいきなりこれるわけないのに女の声だしおじさんじゃないしマネキンなんでうまってるんだよなんでだれもういなかったのに真ん中にこれるわけないのに女の声だしおじさんじゃないし

みんなのわああわああという叫び声が聞こえた。みんな恐くて叫びながらはしてっるんだ。グラウンドから金網のドアをぶち開いた。そのときは既に学校の中に入るのも恐くて道路とグラウンドの真ん中で僕らは身動きが取れなくなってしまった。

気がつくと雨は小降りになってきていた。みんなぜいぜい息をしている。真っ白な顔たち。グラウンドの方をみるとやっぱりなんにもいない。

「・・・聞いた?」

俺はおまるにきいた。

「ん・・・」

おまるはうなずく。みんなもお互いの顔を見回す。みんなラケットを置いてきてしまっていた。神山だけは持っていた。ラケットずぶぬれにしたら使い物にならなくなる。とりに行かなければいけない。グラウンドは真っ暗で、道路の街灯だけが僕らを照らしていた。小島の携帯を見せてもらうとまだ7時前だった。

「俺とってくるよ」

俺は言った。かなり頑張った。きっとその一週間ぐらい前にアルマゲドンとか見たからこんな発言をしてしまったんだと思う。

神山のラケットを借りてグラウンドに降りた。やっぱりなんにもいない。いてもラケットでぶん殴ればいい。どうせ変なおじさんおばさんだろ。

50メートルくらいいったところで、もじゃもじゃしたものが雨にぬれて落ちてる。生首だった。恐かったがホッともした。だってさっきの手はやっぱりマネキンだと確信できたから。マネキンが動いたんじゃないかと思えてきていた俺には落ち着けるいい材料になった。しかし目を上げると、グラウンドの真ん中に人が立っていた。

「だれだー!!!!」

俺はとりあえずきれた。しかし人影は動かない。ほんとうに呼吸もしてないんじゃないかてぐらい動かない。モノみたいだ。



マネキンが立った・・・・?



その人影には首が無かった。ラケットはマネキンの周りに散らばっている。逃げたい。視界がまたせまくなってきた。雨はやんだ。音がしなくなった。遠くの方で車の音が聞こえる。

近くには民家の明かりもうっすらと見える。でも目の前にはマネキンが立ったものがある。ほとんど真っ暗だ。 後ろも振り向くのが恐い。前にも進めない。

そのとき

  すぐ耳元で

「ふふ」

という声が聞こえた。俺は後ろを振り向かずにラケットをぶん回した。ゴンという音がして

「ひゅぐっ!!!」

という声が聞こえた。同時にマネキンが前のめりに倒れた。

わああああああああああ

と叫びながら俺はラケットを拾い集めてダッシュした。 なにかに抱きつかれた。目をあけてしまった。目の前にマネキンの首があった。顔の表情なんてない。目がキラキラしていた。髪の毛がずぶぬれでどろどろだった。俺はマネキンに頭突きした。

「だいジョブカー!!!!」

おまるの声がきこえた。生首は俺の背中にくっついた。走った。抱きついてくるものをみたくなかった。目をつぶてはしった。背中に生首ががんがんあたる。

ひゃああひゃああ

と俺はひどい泣き声でグラウンドから逃げ出した。グラウンドを出てから、みんなのところへ駆け込み、何も言わずにみんなに抱きついた。抱き疲れるのも恐いらしくてみんなひいひいいって泣いていた。

まっくらな弓道場の坂道はよして正門から部室に戻ることにした。



※この話はここで終わっています。後に掲示板に書き込まれることはありませんでした。
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