Aの話
大学生を卒業し、社会人になった僕はじいちゃんのお墓参りに行きました。じいちゃんのお墓の掃除をするため水をくみに歩いていると、あるお墓の前でかがんで、目をつぶり、熱心に手をあわせている、女の子がいました。僕が水をくんでからまた引き返して来てもさっきと変わらないまま女の子は拝んでいます。
で、僕もじいちゃんのお墓の前で一通り手をあわせてから、草引きを始めました。ふと見るとさっきの女の子が向こうから歩いてきます。何かに疲れきった様な顔、そしてそれは見覚えのある顔、その子は高校のクラスメートで明るく、とても人あたりのいい子でした。名前は美雪(仮)。彼女も僕に気付き、軽く微笑み、会釈。
それからしばらくたってから、その女の子と昔から仲が良かった友達Aと飲みに行く事になり、話題はその女の子の話に…するとさっきまでバカみたいにはしゃいでたAが、急に暗い顔になり、
「あぁ、あの時会ったね。あのお墓は、美雪の彼氏のだよ…大学生の時に付き合ってた…去年ぐらいに死んじゃったんだけど…」
そこから先は不謹慎だけど、僕が頼みこんでやっと教えてもらいました。どうやら彼氏は自殺だったみたいです。
Aが言うには、美雪が最初に相談してきたのは、
「彼氏に浮気をされた。もう別れた方がいいよね?」
だったそうです。Aは、
「浮気するような男は最低。別れた方がいいよ。」
しばらくして、美雪から次の相談。
「あの人が怖い…。意味のわからないメールをたくさん送ってくる。電話もたくさん…。大学にもこない。」
Aがどんな内容か聞くと、
『美雪、助けてくれ!怖いんだ!今すぐうちに来てくれ!霊にとりつかれた!』
といった内容のメールが3日ぐらい続いて来たとのこと。Aは、
「絶対嘘。行かない方がいい。寝る時は絶対鍵をかけて寝るのよ。それとアドレス変えた方がいい。」
美雪も
「…わかった。」
その次の日、また美雪からAに電話、
「あの人家まできた!電話も何回もかかってくる。怖くてドア開けれない!外からガチャガチャしてる!」
Aもちょっと怖くなり、
「絶対開けちゃだめ!しつこい様だったら警察呼んだ方がいい!」
と電話してると、
「あ、帰った?」
と美雪
それから1ヵ月がたち、大学も卒業。もうそんな事があった事も忘れかけた頃、美雪からまたあの彼氏の話を聞く事になった。
彼氏が首をつって自殺してるのがアパートで発見された。
彼氏の遺留品から、彼女の所へ警察がきた。事情聴取され、彼氏との事を全て話してきた。死後1ヵ月ほどと説明され、美雪は呆然としたとの事。
「わたしのせいだ…」
Aは、
「そんなことない。私の責任。アドバイスしたのは私。だから美雪は悪くないのよ?」
それから、数日後、美雪の家にAは泊まりに行ってた。二人で飲んで、ビデオを見て、さぁ寝ようかって時に
『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!』
二人ともとび起きて電気を付ける。しばらくしてまた
『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!』
美雪「…彼だ…」
二人はパニック!すぐさま近くに住んでた友人に電話して、「今すぐ来て!」と連絡。
『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!』
またしばらくして
『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!』
10分置きぐらいに鳴るそれは電話した友達が、インターホンを鳴らす瞬間まで続いた。
「外には誰もいなかったよ?」
と友人
3人になってからは一度も鳴らずに朝を迎えた。本当に怖かった。
A「それであの時に美雪と二人で彼のお墓参りに行ってたのよ。あなたもいたけどあれはおじいちゃんのお墓?」
僕「え?おまえもいたの?さっきも、ん?って思ったんだけど、おまえと会ったのなんて久しぶりじゃん?お墓でなんて会ってないよ?」
A「はぁ?何言ってんの?お墓参りして美雪と二人で歩いてたらあなたいたでしょ?目もあったし」
そうだったっけ…??どう考えてもAはいなかった…おかしいなと思いながらもまぁ、そろそろ帰るか?と僕。お金を払い、Aを駅まで見送り、帰宅。
Aが死んだのはその1週間ほど後でした。実家で首をつってるのを家族が…。
僕が知ってる話は以上です。Aがなぜ自殺したか、彼女になにがあったのかはわかりません。今考えてみると全部Aの作り話だったとも考えれます。そんな風には見えませんでしたが…そして美雪は今も生きてます。彼女に聞けば実話だったのかどうかわかります。が、彼女の胸中を考えるととてもじゃないけど聞けません…
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