彼女の香り
俺には結婚を控えていた人がいた。
付き合って2年、気立てが良くて可愛くて本当に大好きだった。彼女を見ているだけで幸せな気分になった。
そんな彼女が交通事故で亡くなった。
青信号横断中に飲酒運転の車が突っ込んできたらしい。とてもひどい事故で、葬式の時は顔さえ拝ませてもらえなかった。見ると犯人を殺したくなるからとお父さんがいった。結納も済ませていたので、ご両親と泣くだけ泣いた。
それから三ヶ月たった頃。まだ彼女のことを忘れられない俺はふわふわした日々を送っていた。
会社から帰宅途中、ふいに彼女の香りがした。大好きだった彼女の香りだった。
「あっ」
と思って足が止まった。次の瞬間目の前を黒い影が横切った。車がすごい勢いで壁に衝突した。そのまま歩いていたら確実にはねられていた。
これを書きながらも涙が止まらない。俺は彼女が来てくれたんだと今でも思ってる。
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