第九十七話

語り部:飛猿 ◆kT8a8E4J7s
ID:ZMuorhJU0

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オレが札幌に住んでた頃の話。時期は、そう、ちょうど今頃だったな。

オレはガキの頃から、周りに不思議な人影が見えることが時々あったんだけど、「あれ?」と思った瞬間に消えちゃうから、 ずっと単なる気のせいだと思ってたんだ。

その日はオレの部屋で友達が集まって、ダラダラしてた。すると、目の前でスカートがひるがえった気がしたんだ。確か赤いスカートだったような気がする。

その人影はオレの横を通って、その時オレがもたれかかっていた壁にスーッと吸い込まれていった。

「またいつものか…」

と思って、気にせず会話を続けようと思ったが、友達の一人がオレのほうを見ながら凍り付いている。そして言った。

「今の……誰?」

部屋は騒然となり、とうとう隣の部屋の住人に聞いてみようということで、それまで話したこともなかったのにいきなりドアベルを押して、

「今壁をすり抜けて誰かきませんでしたか?」

と間抜けなことを聞いた。もちろんポカンとされた(ちなみに女の子でした)。



結局それ以来、部屋に誰も現れることはなかった。

ただ、そこで撮った写真がちょっとオカシなものが写ってたりして、気味が悪いってほどでもなかったけど、他の事情もあってその部屋はほどなくして引っ越した。

別にそれから特に妙なことが起こった記憶はなし。

ただ、人影は今でも時々見る。

【完】
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