第九十三話

語り部:うなぎいぬ ◆2PrHYfpz5k
ID:cEbK8d160

【093/100】
『死体』

高校時代の先生に聞いた話。

修学旅行で京都の旅館に来たA。当然消灯と同時に寝るはずもなく、先生の目を盗み友人数人で旅館を探索することに。

暗い廊下を進むと、一番奥の和室から薄明かりが漏れている。

「宴会場…?」

人の気配はない。そっとのぞくと、誰かが寝ているのが見える。

「なぁ、あれK先生じゃねぇ?」

うつぶせになった背中の特徴から、それが体育のK先生ではないかという友人。

最初はさっと扉の影に隠れて様子を伺っていたものの全く動く様子のないK先生に、だんだん心配になってきました。

意を決して寝ているK先生に近づく3人。

「K先生……?」

横になっているK先生を起こそうと、そっと触れると…

…ごろん。

先生の体が手前に、その顔がこちらを向きました。

「…死んでる……っ…!?」

何か恐ろしいものを見たような形相で、目を見開き口から泡を吹いてK先生は冷たくなっていたのです…

「うわぁああああああああああああああああっ…!!!!!!」

三人は同時に叫ぶと、一目散に逃げ出しました。

当然その声を聞きつけ先生達が廊下に飛び出してきます。

「お前ら!!何やってる!!!!」
「うわぁああああああああああああああッ!!???」

廊下に飛び出してきたのは他でもない、死んだはずのK先生だったのです。

先生が死んでました!と説明しても信じてもらえるはずもなく三人はこっぴどく叱られ、修学旅行は終わりました。



時は経ち、十年後。新聞を読んでいたAはふとある記事に目を止めます。

「京都の旅館で男性教諭突然死」

そう、K先生が亡くなったという記事でした…。

じゃあ、あの時見た先生の死体は………

【完】
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