第八十五話

語り部:かたりや
ID:B5B13T1BO

【085/100】

これは10年以上前に本にも乗りましたので、知っている人もいるかもしれませんが実話です。

高校二年の夏のことです、私は下宿先から電車で学校に通っていました。その日は大会前の部活で帰りがかなり遅くなり、無人駅であるその駅で電車を待つのは私一人でした。

ボーっとしながら電車が来るのを待っていると遠くの方から灯りがチラチラと見えてきたので、電車が来たと思い灯りの方を見ていました。

しかし、何故かなかなか近付かないし、音もしない。

「おかしいな?」

と、少し線路に近寄ると金縛りに…

何が起きているのか分からず、何とか体を動かそうとしていると、灯りが近付いてきました。

そう、電車ではなかった。ろうそくを持った人の列…

もちろんパニックです。どうしていいかわからない、近づいてくる人…良く見てみると、明らかに電車事故で亡くなった人々ただただ、通り過ぎるのを眺め、気付かないでいてほしいと祈っていました。

列も終盤になり、

「あぁ、もうすぐ通り過ぎる」

と、安心した瞬間。列の後ろにいた女が、私を見て「ニヤリ」と、笑いました。そうすると、まるで何かに引き摺られるように、足が一歩ずつ前に進み出したのです。

本気で焦りました、でもどうしようもない、止まらない。

「おじいちゃんたすけて」
「神様助けて」

心の中で必死に祈りました。

電車が来てる…ダメかも…助けて!

その瞬間、肩を後ろに引かれ後ろに転びました。目の前を快速の電車が駆け抜けていく…本当にギリギリのタイミングでした。

私はボロボロと泣き続け、暫くして落ち着き、線路を見ると線路にろうがこびりついていました。

「もう少しだったのに」

そんな言葉を残して消えたあの人達は今はどこにいったのでしょう。未だにさ迷っているのでしょうか。そして、あの時私を助けてくれた存在はなんだったんでしょうか。

【完】
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