第八十一話

語り部:うなぎいぬ ◆2PrHYfpz5k
ID:cEbK8d160

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『二段ベッド』

中学の林間学校での話です。

山の中にあり、昔から出る…と噂のあった宿泊施設。部屋は8人が泊まれるようになっており二段ベッドがそれぞれの壁に二つずつ連なり、向かい合って設置されていました。幽霊のことなどすっかり忘れて、レクリエーションやら何やらの行事ですっかりへとへとに。

やがて消灯の時間になり昼間はしゃぎすぎた事もあり、私はすぐ眠りについてしまいました。

「…ぅぅぅぅぅ……」

夜中ふと目を覚ますと頭の方から唸り声が。私は二段ベッドの二階に寝ていたのですが、隣のベッドに寝ていたのはYちゃん。少し霊感がある女の子でした。

「Yちゃん、大丈夫…?」

他の子が寝ていたこともあり、私は眠い目をこすり小声で話し掛けました。

「…ぅぅぅうううぅぅうう」

身体を起こしてYちゃんの方を見るとうつ伏せの状態で顔だけ横を向いているらしく、長い髪が布団からはみ出ていました。

今思うとかなり薄情なのですが、全然返事を返してくれないし眠いし、寝言かもしれないと思った私は

「…具合悪くて我慢できなかったら起こしていいから」

と言い放ち、再び眠りにつきました。

翌朝目を覚ますと、向かいのベッドの一段目で友人のOちゃんと談話するYちゃんの姿が。

「Yちゃん昨日具合悪かったんじゃないの?大丈夫?」

と聞くときょとんとした顔。

「ううん、昨日はぐっすり寝てたし、別に具合も悪く無かったよ」

あれ、じゃあやっぱり寝言だったんだなーと軽く考えその場は終わったのですが。後でトイレでYちゃんと一緒になったとき、涙目で話してくれました。

「…さっきはごめんね、他の子が恐がるといけないから黙ってたんだけど…あのベッド嫌な感じがして眠れなくて、Oちゃんのベッドに移動したの。Oちゃんのベッドからふとさっきまで自分がいたところを見ると…髪の長い女の子が寝てて、わたしのこと睨んでずっと唸ってた……」

何故かその時になって気づいたのですが、Yちゃんの髪はおかっぱくらい。昨夜隣のベッドで寝ていたあの長い髪の女の子は、一体誰だったのでしょう…?

【完】
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