第七十八話
語り部:Gペンマン ◆UoNspEbUF6
ID:SLzUJyDX0
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-自分に変わる絵-
あんまり上手くは無いが私は趣味でよく軽い鉛筆デッサンをする。
その日のモチーフは絵を始めたときからずっと使っているデッサン人形だった。もちろん、そんなはじめの頃から何回も模写しているわけだから当然簡単に描ける素の状態では描かず適当に目に付いたキャラ物のキーホルダーを二つデッサン人形の首から下げて難易度を上げたものを描いていた。
描き始めは結構凝ったキーホルダーだったので
「いくらなんでも難しすぎるな・・・」
等とブツブツいいながら描いてたのだが、二時間くらいかけて完成させる頃にはこれまでに無いほどのいい出来の絵になった。
そしてこんな良い仕上がりの絵はもちろん保管する。
・・・するのだが私はどうも大雑把な性格なので、絵から絵へ鉛筆の粉が移らないようにする処理もせず全部同じクリアファイルに入れてしまうという悪い癖があった(今もこの癖取れてないけども)いくら上手く描けたからとはいえその絵も例外ではなく、保管用クリアファイルにつっこんでその日は何事も無く終了した。
一週間程たち、クリアファイルから例のデッサン人形の絵を取り出すと案の定他の絵から鉛筆の粉が移りちょっと違った雰囲気の絵になっていて具体的な変化点は片方のキーホルダーがかすれて見えなくなっていたということと、微妙に基本的にのっぺりとした凹凸の無いデッサン人形に目や口、髪みたいな人間の顔のパーツっぽい模様がついていたという事だった。
そしてふとデッサン人形に目をやると絵でかすれて見えなくなった方と同じキーホルダーだけが無くなっていた。薄気味悪くなった私はさっさと絵を元に戻し、キーホルダーを探すが見当らなかった。
更に一週間程たち色々忙しくて例の絵の事なんかすっかり忘れ、新しい絵を完成させクリアファイルに入れようとして例の絵が目に入った。
今描きあがった絵をとりあえず中に入れ例の絵を取り出し私は絶句した、体は一つだけキーホルダーをぶら下げた普通のデッサン人形なのに顔だけが妙にリアルな”人間”なのだ。
しかも、私がすごくその”顔”には見覚えがあった、そして直感が”誰の顔”なのかを理解したのだろう何を考えるよりも先にその例の絵を掴み
・・・洗面所へ向かい鏡をみる。
見比べてみると良く分かる。たしかに”デッサン人形の顔”があるべき場所には”私の顔”が描かれていた。
私は怖くなり一瞬でその紙を横一閃に破きごみ箱に丸めて放りこんだ。こんな事があったときは昼寝でもしてしまおうと部屋に戻り、デッサン人形に目をやるとさっき破いた通りの横一閃の傷がありしかもさっきまでは何とも無かったのに人形にかけられたキーホルダーは完全にちぎれその上半分は人形にかかったまま下半分はその足元に落ちた状態でそこにあった。
そしてキールダーは捨て、デッサン人形と例の絵を捨てたごみ箱に塩ぶちまいてその場はなんとかなったんだがゴミ回収日がくるまでどこからともなくむけられる視線が消える事は無かった。
【完】
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