第六十九話

語り部:あしも ◆GEibvsADkM
ID:NwkrHyfd0

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『赤い部屋』

タクシー運転手の親父から聞いた話。

その日、親父は人気のない夜の林道で不気味な女を乗せた。その女は前髪で顔が全然見えないしとにかく不気味。とりあえず親父が 「どこへ行けばいいですか?」 というと女は目線もあわさずに北を指さした。 運転中、車内には異様な空気が張り詰めていた。女が無口すぎる。 しかしルームミラー越しにじりじりと視線を感じる。しかし親父は目線を合わせることができなかった。とりあえず言われたとおり行くと、周りに民家も何もないところにぽつんとボロ家が立っていた。 「・・・・・ここ・・」 聞き取れないぐらいの声でボソッと女が言った。どうやらここが彼女の家らしい。 女は何も言わず静かに車を降り家に入っていった。女が家に入ったのを確認して運転手はホッと息を下ろす。 しばらくして親父は思った。 「こんな人気のないところにぽつんと家があるのはおかしい。」 親父は車を降り、その女の家をしばらく眺めた。 ・・・生活音などの物音は一切聞こえない。 そして親父はその家のドアスコープ(のぞき穴)から中の様子を伺った。 当然外側から見ているのではっきりとは見えないが、ドアスコープからなのでうっすらとしか見えないが、室内はぼんやり赤みがかっていた。 「趣味の悪い部屋だ」 そうつぶやくと親父は車に乗りもと来た道を帰っていった。 翌日、同僚にその話をして背筋が凍りついた。 しかし背筋が凍りついたのは同僚ではない”あの女”を乗せた親父の方だった。 「あぁ、俺もその女をこの前乗せたよ。本当に気味が悪かったよ。」 「おかげにルームミラー越しににらんでくる目が真っ赤に充血してたもんな」 そう 親父がのぞき穴から見たもの・・・ それは部屋が真っ赤だったのではない。 あの女も親父同様、のぞき穴からこちらをずっと監視していたのである。 真っ赤に充血したその瞳で・・・。 【完】
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