第五十六話

語り部:煙  ◆qQ/VA7MA.o
ID:lGNJTqxq0

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一週間くらい前、夜に地元の峠に友達と走りに行ってきました。峠を抜けるまでに10件くらいラブホがあり、夜でも少しは車が通るような道です。

暫く走っていて、疲れたから少し休憩を取ろうと、バイクを止めタバコ吸いながら談笑していました。一本吸い終えた頃に一人(A)が、

「ちょっと走ってくる」

とバイクに乗って行ってしまいました。

なんとなく俺もAについて行こうと思って立ち上がったのですが、さっきまで持ってた筈のジッポライターがなくなっているのに気付きました。ポケットの中もないし、座ってた周辺にありませんでした。結構いいライターで貰い物だったので無くしたくないと思い暫く探したけど見当たりません。

Aはもう見えなくなったので、追いかけずに探しつつも残った奴と喋っていました。暫くしたらバイクのライトが見えたのでAが戻ってきたと思い、みんなで手を振ったのですがAは後ろに女を乗せたままこっち見向きもしないで通り過ぎました。

俺たちは

「ナンパして捕まえたんだろう」

と思ったので特におかしいとは感じませんでした。俺自身昔に、彼氏と喧嘩して置いてかれた〜なんて子を拾って近くの駅まで送った事があるので。

残された俺達は、コンビニで酒でも買ってうち飲もうってことになり来た道を戻ることにしました。峠を降りてすぐのコンビニに駐車したら、Aのバイクが停めてありました。

皆で、からかってやろうぜ、とコンビニにそーっと入ったらAが俺達に即座に気付いて俺たちのほうに寄ってきました。

Aは

「何で誰も携帯出ねーんだよ!」

と半泣きで言いました。

峠だし圏外なんだろって言ったらA曰く

「コールは鳴るのに誰も出なかった」

らしいです。

皆で携帯を確かめても、Aからの着信はありません。Aの気のせいor電波の状況が悪かったということにして、俺はさっきの女はどうしたのか聞こうとしたのですが、それよりも早くAが話し始めました。

少し走ってたら、女物の赤いパンプスが道に片方落ちてたそうです。暗い道のはずなのに何故かそれがはっきり見えて、よく分からないけどヤバイ!と直感したAは無我夢中で戻ったそうです。

コンビニについてから俺たち全員に電話をしたけど誰も出なかったから何故かAは俺たちが死んだのではないかと心配になったらしいです。

それを聞いた俺たちは、Aの後ろに乗っていた女のことなんて聞けなかったし言えませんでした。その後俺のうちに全員来て朝まで飲んでました。

後日談と言うほどでもないけど、その二日後にAがバイクで転んだらしいです。幸いたいした怪我もなかったみたいなので、直接的な原因があるとは思いませんが。

それよりも、タバコを吸いながら書いてるのですが、なくした筈のライターが手元にあることに今気付きました。あの時あんなに探しても見つからなかったのに……


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