第二十六話

語り部:蝉 ◆8sSemi/UG
ID:g6vlgQD10

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もう七年になるでしょうか。当時私は高校1年生で、妹は小学校の五年生でした。六月の第一週でしたが、祖父の姉である大叔母が死去しました。勿論私の一家も参列し、私も制服を着て葬式に参加しました。私の祖父は兄弟が七人と多く、そのため参列した親戚の数も少なくはありませんでした。

空は心地よく晴れ、風が心地よい好天にも恵まれ、式は何事もなく進行しました。出棺も無事に済み、お骨が焼きあがるのを待つばかりとなり、皆ほっとした様子で式を執り行った大叔母の家で思い思いくつろいでいたその時のことでした。妹が何気なくつぶやきました。

「階段の下のところにいたピンクのワンピースの女の子ってどこの子?」

ぞっとしました。

葬式にそんな色の服を着てくる子供など居るはずがないのです。

その言葉を聞いた親戚の女性の一人がはっとして、次のように語りました。

その大叔母には子供が四人居るのですが、実は死んでしまった長女がいたのです。将来は村一番の美人になると言われたその女の子は、しかし三歳で死んでしまったのです。

今となってはその女の子のことを覚えているものもいなく、葬式の最中にもそのことを思い出す人は居なかったのでした。

妹が見たピンクのワンピースを着た女の子というのは、その女の子だったのだろうということです。

妹の前に現れたのは、誰かに気づいてもらいたかったからなのでしょうか?
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