第二十二話

語り部:徳島ヴォルティス@@サポ ◆K6QUBu7wQQ
ID:8mQHytvn0

【022/100】

先にお話した『着替え部屋』の件と、体験した時期は被ると思います。

私が中学生の頃まで住んでいた家は、田舎の古家の例に漏れず、風呂・トイレが別棟の建物となっておりました。

その別棟は本当に風呂とトイレしか無い小さな建物だったので、風呂に入る際は『着替え部屋』で服を脱いでから、吹き曝しの渡り廊下を通って風呂へと向かいます。廊下の幅は一、二メートル位でしたが、それでも一瞬とはいえ裸で外を歩くので、今から思えばよくあんなプライバシーの無い建物を使っていたなと思いますが……

今回はその、『吹き曝しの渡り廊下』の話。

それがいつだったのか、もう季節は覚えておりませんが、たしか雨の降っていた日だったと思います。私はいつもの様に『着替え部屋』で服を脱ぐと、風呂に入るべく渡り廊下へと向かいました。

外はざあざあ降りの雨。一応渡り廊下に屋根は付いておりましたが、風が強い日などは雨が吹き込んできますので、足早に別棟に向かおうとした、丁度その時。

――ザッザッザッザッ

と、雨音に混じって、足音が聞こえてきました。

思わず足を止め、音のする方向を見つめます。

田舎ですので明かりの数が少なく、ましてや雨の日。外はほとんど真っ暗で、何も見えません。そして何より、足音のする位置。近いのです。明らかに、道路から聞こえてくるのではありません。家や、別棟の明かりから、少しだけ離れたところ。目の前の暗闇から、兵隊が行進するときのような、規則正しい足音が聞こえてきたのです。

ぞっとしました。恐怖感で息が詰まりそうになりながらも、何とか声を張り上げます。

「誰かいるの!?」

しかし、反応がありません。変わらず聞こえてくる足音に、このまま渡り廊下にいては何か怖いものを見てしまう予感がして、私は風呂場へと飛び込みました。

数十分後、恐る恐る風呂から出て、耳を澄ませましたが、もうその足音は聞こえませんでした。

それにしても、あの足音……『着替え部屋』の件と同様、近付いてくるでもなく、離れていくでもなく、ずっとその場に留まっていたように思えます。

足音の主は、こちらに近付きたくても近付けなかったのか、離れたくても離れられなかったのか……どっちなんでしょうね?

【完】
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