第十一話

語り部:里中美子◆UIiQ5N7wO6
ID:uJJbNe1dO

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R峠の怪

数年前の蒸し暑い夜。仕事が長引いて、真夜中に帰途についた時のことである。S県とM県にまたがるR峠を越えれば最短距離で帰れる状況だった。しかしこのR峠、地元でも有名な心霊スポットである。

2台の車に分乗していたのだが、1台のグループ、……これは霊感のある人達のグループなのだが……彼らが

「無理。ぜってー無理。ヤバい。俺ら遠まわりして帰るわ」

と言い出した。そして、峠越えより倍近くも時間がかかるであろう〇号線で帰っていった。霊感のある彼らは、霧モヤの充満する今夜のR峠に、得体のしれない危険を感じたのだ。

残された我々のグループはまったく霊感のないグループであった。むしろワクワクしながら、出るなら来いやぁ、といった風情でヘッドライトをR峠へ向けて走り出した。

霧が濃かった。1メートル先すら見えないほどの濃い霧だった事を覚えている。徐行で走る我々の他に、車の気配は無い。しかし白い闇の向こうには、何かがいるのかもしれない…。

ピーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

突然、電源を切ってあったはずの無線が、一斉に鳴り出した。

「ほら、来たよ、来たよー。何か居るんじゃないかあ〜?」

などと軽口を叩きつつ、トロトロ運転をしながらぬるい汗をぬぐう。もうすぐ山を抜ける…という時、最大の恐怖が我々を襲った。運転席側のドアをノックする音が…

コン、コン、コン、コン……………

『……また来いよ』(低い男の声)



「ぎゃああああああア"ッーーくぁwせdrftgyふじこlp!!!!」(←我々の声)



アクセル全開っっ!!!全力で離脱ッ!!!!

その場に居た全員が聞いた。

あの低い男の声は、いったいなんだったのか。私はその時の急発進で全治三日の怪我を負った。恐ろしい話しである。

【完】
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