第九十六話

語り部:蟻 ◆GJCUnhVBSE
ID:yBezmQGa0

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母のオルゴールの話。

母は、グランドピアノの形をしたオルゴールを持っている。ふたを開けると音楽が鳴る仕組みになっているやつだ。友人からプレゼントされたものだという。

ある夜、母が眠っていると、オルゴールが鳴っているのに気づいて目を覚ました。

(寝ているうちに、寝相が悪くて蹴ったりしてふたが開いてしまったのだろうか?)

と母は思い、寝ぼけ眼でオルゴールを見た。

母は驚いた。オルゴールのふたは、閉まったままだったのだ。それだけじゃない。

(曲が違う!)

そう、まったく違う、別の曲が流れているのだ。母の部屋にあるオルゴールはそれ一つ。他にはない。じゃあ、この音は?

恐ろしくなった母は、無我夢中でそのオルゴールを叩いた。すると、音は止まった。

後日、母にオルゴールをプレゼントした友人が亡くなったとの連絡が入った。友人が亡くなった時間は、まさに、そのオルゴールがひとりでに鳴り出した時間だったそうだ。

[完]
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