第八十三話

語り部:黒影 ◆vi3yuFYKUs
ID:UDZ+PlcUO

【83/100】

茨城県H市のN校での話です。

二年程前の今頃、N校には壱原君という生徒がいました。 壱原君は体が弱くいつも本ばかり読んでいるような男の子だったそうです。

壱原君はいつもクラスメイトからいじめられていました。靴を隠されたりノートを破かれたりは当たり前で、酷いときには女子の前で裸にさせられた事もあったそうです。

そしてついに彼は首吊り自殺をしてしまったのです。首を吊った場所は当時鍵のかかっていたはずの科学室でした。

今回はそのN校で私の体験した話です。

6時間目の授業が終わり部活に行こうとして、私はある事を思い出した。

「あー・・教科書科学室に置いてきちゃった・・・・!!」

そのときはなにも思わず、友達に先に部室に行ってもらい私は一人で人気のない特別棟に向かった。

夕暮れ時特有の嫌な空気にせかされながら科学室の前まで来ると、中に人のいる気配がして、思わず足音を忍ばせる。先生がいたら、忘れ物をしたことをとがめられると思ったからだ。でもあの教科書がないと宿題ができない・・・と思い、仕方なく扉をノックした。でも返事がない。扉を開けても人影はなかった。

訝しく思いながらも机の下から教科書をとり、顔を上げた。あ、そう言えば此処って昔自殺した人がいたんだけ・・・と思った瞬間、後ろから

「うぅっ...タッ...タスケテ......クルシイヨ」

そのしゃがれた声に背筋が粟立ち、後ろを絶対に向かず全力で疾走し扉をぬけた瞬間、背後をチラっと見たら・・・・・いた。

教室の奥

天井からゆらゆらぶら下がる

人影が。

その後の事はよく覚えていません。気づくと家に戻ってきていました。

後日友達や後輩達に聞いてみると、数人同じ体験をしたと言っていました。見た事がない人もタスケテという声を聞いた事があったそうです。

死ぬほど怖かったんですが、同時に可哀想でした。死後も尚、現世で苦しみ続けるなんて・・・・・。

[完]
⇔戻る