第七十六話

語り部:Gペンマン ◆UoNspEbUF6
ID:BAdp4pvh0

【076/100】

【怖い話】

私はすごい優しいうちの婆ちゃんがすきな子だった。そして、そんな優しいうちの婆ちゃんが一回だけ声を荒げて私を叱った事がある。

それは思春期の半ばオカルトにはまって心霊スポットめぐりなんて言う馬鹿なことを夢中でやっていた時期だった。

どの心霊スポットにいっても何も感じずつまんないと思っていたところあるトンネルの前で足を引っ張られるような感覚に襲われるという体験をした。

その夜私は足を掴まれた恐怖よりついに怪奇現象に遭えた興奮で眠れずトンネル前での体験を作文用紙に脚色を加え書き出してみた。一旦書き出してみると予想外に良い出来で、婆ちゃんにも見てもらいたくなり、次の日の朝婆ちゃんに見せると、やさしい顔で作文用紙を受け取り真剣に目を通してくれた。

だが、内容を見終わると顔の表情が一変して怖い顔になり。

「こんな、死人に媒体を与えるような真似はしちゃいかん!!」

と今まで聞いた事も無いような声で叫びながら私の目の前で作文用紙を破いた。

その翌日からはいつもどおりのやさしい婆ちゃんに戻っていたが、それから私はそういうマネはしなくなった。

そして・・・、その数年後婆ちゃんは他界した。私は悲しくて悲しくて、泣きに泣いた。婆ちゃんに会いたくてたまらなくなった、そして叱られたあの日の婆ちゃんの台詞の”死者に媒体を与えるという”所を思い出し、すがるような想いで婆ちゃんとの思い出を作文用紙に書き綴った。

それを書き終わった夜、夢に呆れ顔の婆ちゃんが出てきて。

「本当に困った子だねぇ・・・、あなたはもう一人でやっていけるんだからがんばりなさいよ!」

と一言だけ言って消えていった 。

目が覚め机の上に置きっぱなしだった作文用紙の最後の一枚に目を通すと、見慣れたお婆ちゃんの字で”でも、呼んでくれてありがとうね 婆ちゃんより”と書かれていた 。

これが、わたしが体験した中で一番怖いというか不思議だった話です。

[完]
⇔戻る