第五十三話

語り部:里中美子 ◆UIiQ5N7wO6
ID:XTPx7mngO

【053/100】

数年前に実際体験した話。

仕事が終わって、仲間数人と帰路を急いでいた。真夜中だった。

道路をひた走っていると、仲間の一人が、

「ア…」

と唸って、眉をひそめた。

「どうしたの?」
「今、路肩に誰かが体育座りしていた」

ゾッとした。わたしは窓側に乗車していて、ずうっと道端を眺めていたが、そのようなモノは見えなかったからだ。

「見た。体操服みたいな服、着てた」

半信半疑でUターンして戻ってみた。やはり誰も居ない。周りを探してみると、ガードレールの脇の、目立たない場所に、お地蔵さまがちょこんと佇んでいた。

不幸な事故にあった子供の霊が、まだ成仏できずに、そこにいるのだろうか…。

[完]
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