第四十一話

語り部: ◆KrithSk2m6
ID:iHYwWtAM0

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マラソン大会

その中学校では毎月11月にマラソン大会が行われている。

その年、体の弱い生徒が一人参加していた。担任教師は一度は見学する事を勧めたが、彼の参加への意志は固かった。頑なに参加を主張し、学校側も参加を認めざるを得なかった。

大会当日。彼は、体の弱さとは裏腹に意志が強く、最後尾ではあったが最後まで完走。そんな彼をゴール前に集まったクラスメイト達は拍手と大歓声で迎えた。

ところがその日は非常に寒かった。マラソンに加えこの冷え込み。心臓に大きな負担がかかってしまったのだろうか。彼はゴールした途端意識を失ってしまった。すぐに病院に運び込まれたが、そのまま息を引き取った。

後日、マラソン大会のスナップ写真が展示された。頑張る生徒達の姿がところ狭しと張り出された。その中にくだんの少年がゴールした瞬間に撮られた写真もあった。

「やっぱり無理にでも止めておくべきだったんだろうか」

担任教師は後悔の念を抱きながら写真の中の少年を見つめた。苦悶の表情を浮かべ、今まさに倒れようとする少年。そして、後の悲劇を知らずに少年に向けて暖かい拍手を送る他の生徒達。しかしその写真に思いがけない点をみつけ、教師は

「ひっ」

と声をあげてしまった。何万分の一の確率:奇跡の瞬間、狙っても撮れない光景。

写真の中、少年に向けて拍手を送る生徒達の手は、全てぴったりと合わさっていたのだ。

まるで合掌しているかのように。

[完]
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